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外側に続く物語 4 

      めてお→ツヴァ⇔楼香



「さあて、楼香さんに頼まれてた本も借りたし、たまには寄り道しないで帰るか」
 アカデミーから出てきたツヴァイトは冬の透き通った日差しを余すことなく浴びて、たった今借りてきた本を手にしたまま大きく伸びをした。
「何か変だな」
 大聖堂を見上げる距離まで来たところでツヴァイトは一度だけ振り返った。
 白い石畳に街路樹に家並み、当たり前の日常風景。その中に紛れ込んだ非日常的な異物をツヴァイトは感じ取っていた。
「人間なら別にいいんだけどな」
 がりがりと頭を掻きながらぼやくと、あっさりと諦めて大聖堂の扉を開いた。


* **


「ありがとうございました」
 楼香がやわらかく頭を下げる。
「ついでですから、それよりあの本で良かったですか?」
 ツヴァイトは手で制して何気なく尋ねる。
「ええ、違っていました」
 楼香がさらりと答えたのでツヴァイトは一拍遅れて驚きの声を上げた。
「あれ!?」
「でも聞いたってことはある程度自覚はあったのですね・・・」
楼香は諦めたようなため息をついた。
「いや、鈍器がどうたらってところは覚えてたんスけど、チェインストーリーとかそんな名前じゃなかったスか?」
「忘れちゃう人には教えてあげません」
 にべもない楼香の答えに、部屋の空気がずしりと重みを増した。
「ひょっとして、楼香さん怒ってます?」
「いいえ」
 本当に怒っていないかのような声で楼香は答えた。
「・・・それは良かった。それで、その本はいまどちらに?」
 絶対に目を合わせないようにツヴァイトはずるずるとに視線を巡らせた。
「先ほど部屋を覗いたら居なかったので、“めてお”に預けてきました。」
「あら、了解っす。・・・にしても悪かったな」
 そう言って出口へ向かう。
「気にしないでください。こんなことじゃないかと思っていましたから」
「そすか・・・」

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外側へ続く物語(3) 

             ヤドリ⇔ハク


 アカデミー図書館の入り口にヤドリは立っていた。
「おいハク、本とやらはあいつらに渡したのか?」
 奥の机に向かい合って座っている男女を見とめるとボソリと呟いた。
「うん、間違いない」
 ヤドリの呟きにハクと呼ばれた何かが囁いた。
「ったく、面倒なことしやがって・・・」
「時間も無かったし、こんなに早くヤドリが見つかると思わなかったんだ」
「後で全部話してもらうからな」
 その時、背の高い白い神官衣の男がヤドリを邪魔そうに見下ろしながら脇を通り過ぎた。
「んじゃ、いくぜ。ハク、てめーは姿消しとけよ」
 気を取り直してヤドリが奥に向かい合って座っている二人へ歩み寄る。
「なあ・・・」
 しかしすぐに言葉に詰まる。
(ヤベ、どんな本か聞いてねーな)
「なんでしょうか?」
 ヤドリが二の句を考えるよりも先に若い男の方、レドが立ち上がって口を開いた。笑顔は浮かべていたが突然現われたヤドリを不審に思っているのは明らかだった。席を立ったのも警戒してのことだろう。
「俺の知り合いから、本を預かってるってんで来たんだが、なんか知ってるか?」
「私が貰った本のことなのかな?」
 その問いに先に反応したのは反対に座っていた少女の方だった。青々とした植物の髪を見て、初めて少女が人間でないことにヤドリは気づいた。
「お、ちょっと見せてくれー・・・ふお!」
 そういって振り返りながら伸ばした手を横から突然掴まれ、慌てて振り払おうとしたが予想以上の力にびくともしなかった。
 腕の先へ視線を走らせると、掴んだ本人のはずのレドが何故かしまったという風に慌ててヤドリの腕を放して、フレーゼは困った顔でレドを見ていた。
「びっくりした」
 それは俺のセリフだ、と怒鳴りそうになるのを抑えてレドをじとりと見た。
「あ、あはは、本でしたよね。さっき返してしまいましたけど・・・」
 誤魔化し笑いを浮かべながら、本棚を指差す。
「お?」
「でも多分さっき誰か持っていってしまいましたよ」
「な、なに!?」
 ヤドリはまともに驚く。
(おい、どういうこった?)
 考えるフリをして口に手を当てて、小さく囁く。
(誰かが借りてっちゃったみたいだね)
 ヤドリが小さく舌を打つ。
「持ってったの、どんなヤツか覚えてるか?」
「・・・んんー、白い神官衣の背の高い人だったかなぁ?」
 ちょっと考えてからレドは答えた。
「サンキュ」
 ヤドリは一言だけをその場に置いて即座に身を翻すと、出口から廊下のまばらな人の流れに飛び込んだ。
「プリーストか。そいや居やがったな。途中一人出っ張ってんのが」
「うん、来るときすれ違ったあの人だ。追いつけるかな?」
 不安そうなハクの言葉をヤドリが鼻で笑い飛ばす。
「俺は忍者だぜ?しかもヤドリだぜ!?」
 よく判らない自信を見せる。
ヤドリは地面を蹴り、廊下の人の流れを一気に飛び越えていく。

外側へ続く物語 2 

       レド⇔フレーゼ



「もー!なんでフレーゼそう面倒ばっかり持ってくるのかなー」
 冒険者アカデミーの図書館に来ていた人間のレドは物凄く大きな独り言を言いながら手にした茶色い皮表紙の本を棚に戻した。
「だってー・・・」
 少女のような姿をしたホムンクルスのフリーゼは地面に着きそうな程長い葉っぱと蔓の髪をいじりながら、きまり悪そうにスイスイ視線を泳がせていた。
「だってじゃないでしょお。大体どんな素敵な出会いかたしたら見ず知らずの人に本の返却なんて頼まれるのさ!」
「だっていきなり渡されたんだもん」
言いたいことは山ほどあったが、本気で起こる気も無かったので結局レドが折れる。
「・・・まあいいけど。アカデミーは一度来てみたかったしね」
レドがため息一つ吐いて機嫌を直して、本棚を眺める作業を始めた。
「ねえレド、どんな本だったの?」
「いや、どうってことない本だったよ。題名みたいなのはあったけど中はほとんど白紙だったんだ。日記か何かじゃないのかな?」
「ふーん」
「なんで?何か言われたの?」
 本棚を眺めながら何気なくフレーゼに聞いた。
「うん、次に繋いで欲しいんだって」
「・・・・・フレーゼ」
 レドは少し考えた後、選んだ10冊程の本を抱えて振り返ると真面目な顔をして言った。
「変な人の変な話を真面目に聞いてるからこんな本押し付けられるんだよ?判ってる?」
「・・・はぁーい」
 フレーゼは不満そうだったが素直に頷いた。
「今の人」
「どうしたの、レドの知り合い?」
 白いプリーストらしき服装の背中を見送るレドにフレーゼが問いかけた。
「いや、今のプリースト。さっき僕が返した本を持っていった」
「私が持ってきた真っ白な本?」
 レドが頷く。
「何に使うんだろう、気になるなぁ」
 レドはカウンターでやり取りをしているプリーストの背中を見ながら呟いたが、フレーゼは興味ないようで曖昧に頷いただけだった。

外側へ続く物語 

外側へ続く物語 ~next page~

プロローグ


       レッドヘリング→?


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