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16の夜 

れからフロルとハクは花を摘んだり、木の実を採ったりして日が暮れるまで遊んでいた。
「フロル、もう真っ暗だよ」
 ぴょんぴょんと鹿のように森を駆けて行くフロルを慌てて追いかけながらハクは言った。
「ハク、早くーっ」
 たぬきのハクには暗い森の中でも少し欠けたお月様の光だけで十分に見えたが、人間のフロルには暗すぎるはずなのに、フロルはそんなことお構い無しに凄い勢いで走っていた。
「そんなに走ったら危ないよ」
 やっと立ち止まったフロルに追いついて、ハクは少し荒くなった息を整えた。

 ハクはこんなに元気なフロルを初めて見たと思った。
 フロルとは毎日散歩をしていたけれど、いつものんびり歩くだけだったし、こんなにはしゃいでいるのを見たのは初めてだった。
 人と話すのもあんまり好きじゃなかったみたいだったので、いつも伏目がちで気まずそうにしているフロルを見上げていたのを覚えている。

「あれ?」
 そこでフロルを見て首をひねる。
 ハクはフロルよりも頭一つ分は大きい。
 それなのにどうしてフロルを見上げていたんだっけ?と思った。

「ハク、見て」
 しかしフロルの大声があっという間にハクの頭の中を埋め尽くしてしまったのでハクは、はっとなってフロルを見て、フロルの見ている方をみた。
「あ・・・・・」

「すごいでしょ?」
 フロルが両手を広げて自慢げに言った。
 それは確かに凄い光景だった。
 フロルの立っている場所は森の切れ目で、彼女の背後には大きな沼か、池が広がっていた。風一つない真っ黒な水面は黒い鏡みたいに夜空の星まで映していてきらきら輝いていて、真ん中に少し欠けた月が黄色くぽっかりと浮かんでいた。
 まるで星空の上に立っているようだとハクは思った。

 その幻想的な光景にハクは息をするのも忘れて星の海を見ていた。
「きれいだ」
「私の一番のお気に入りよ」

 思わず呟いてしまうほどにきれいな光景だった。

 でも・・・・

 僕はこの風景を知っていた。
 そういえば、あの時もフロルは同じことを言っていたのを僕は思い出した。
 あれは確か、フロルの大好きで何度も読んでもらっていた絵本で、自分で読めるようになってからはフロルが何度も何度も、僕が暗記してしまうくらい読んで聞かせられたんだ。

 これはあの時の絵本の風景にそっくりだった。

 僕は急に寒気に襲われて、ぶるっと身体を震わせた。
「フロル」
 フロルは吸い寄せられるようにじっと星の海を見つめていた。
「もう帰ろう?」
 ただそれだけの言葉にフロルは敏感に反応して僕を見た。
「なんで?」
 フロルの短い言葉は、冷たくて厳しくて、それなのにやけに悲しそうで、僕はどうしていいのか何を言ったらいいのか判らなくなってしまった。
 
 夜の森はとても危なくて、ハクの言った言葉自体はごく当たり前なことなはずだった。
 それなのに、ハクはフロルの言葉にひどく狼狽していた。

「だ、だってほら、皆心配してるだろうし・・・・」
 言いながらそんな事を言いたいんじゃないと思ったが何を言おうとしたのか、まるで思い出せなかった。
「なんで?なんでそんなこと言うの」
「僕たち、ここに居ちゃダメなんだ。僕たちはもう帰らなきゃいけない・・・そんな気がするんだ」

 フロルは何も言わなかった。代わりに、くしゃと顔を歪めてハクの脇を通り過ぎる。
「フロル!」
 僕は慌てて振り返って手を伸ばしたけれど、フロルは風のように真っ暗な森の闇に溶けるように消えていってしまった。

 一人取り残されたハクはやるせない気持ちでフロルの消えた森を見つめていたが、やがて自分が見知らぬ森に取り残されてしまったことに気が付いた。

(どうやって帰ろう・・・・・)

 (十四話)でも・・・だからこそ・・・(1/24更新。もうちょっと書き足そうかなー?次行こうかなー?考え中(==;)
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