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16の夜 

クはうつ伏せになって枕に顔を埋めてぐったりしていた。
「なにはともあれ、無事でなによりだな」
 ハクの傍で棒のように立っていたレッドヘリングがやれやれと言ったふうに口を開いた。
「全っ然無事じゃないよ!」
 ハクががばっと起き上がると自分の耳を指差した。
「死に物狂いで帰ってきたらフロルは部屋でグーグー寝てるし、
 見てよ!変な緑色のトカゲに食べられそうになったんだよ!」
 指差さしたハクの頭の上の三角形の左耳がちょっと千切れていたのを見てレッドヘリングは感嘆の声を上げる。
「ほー、良い歯型だな、さぞかし健康なプティットだったのだろうな」
「ちがうよ!そんなことじゃないよ!」
 ハクが喚いていたが、そのとき扉を叩く音が聞こえたのでレッドヘリングは無視して扉に顔を向けた。
「死にそうだっていうから来てみたら全然じゃない」
 扉に立ったセリスはハクを見てつまらなそうに言った。
 セリスはちらりと目配せするとレッドヘリングは黙って小さく頷いてするりと部屋を出て行った。
 セリスは近くの椅子を引き寄せてハクの傍に腰掛けた。そしてハクを見て意地悪そうに笑った。
「聞いたわよ、ケンカしたんだって?」
 セリスの言葉にハクはむー、と視線を逸らす。
「でも彼女の言う通りじゃなくて?」
「え?」
 セリスが言った言葉の意味が解らなくてハクは目を丸くする。
「あの子はここが気に入っているじゃない。連れて帰る必要なんて無いんじゃなくて?」
「そうなんだけど・・・・・」
 ハクは頭を抱えてむー、と唸って
「僕たち・・・ここに居ちゃいけない気がするんだ」
 と、よく分からない事を言った。
 しかしセリスは笑うでも切って捨てるでもなく、ハクを見て言った。
「だけどここにはあの子の望んだ全部あるわ。悪いことなんて何もなくてよ?」
 ハクはセリスから視線を離せないまま、何かを喋ろうと口をもごもごしていた。
「うー、でも・・・・」
「でも、なのよね」
 セリスが小さく笑みを浮かべる。
「え?」
「でも、それは悪いことなのかもしれないわね」
 ぽかんとしているハクを尻目にセリスは壁の時計を見て「もうお昼だわ」と言って出て行ってしまった。


「えーと・・・・・?」
 一人っきりになった部屋でハクはセリスの消えた扉を呆然と眺めていた。

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 (十五夜)世界の壊しかた(1/25更新)
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