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16の夜  1/2更新 

~~~二夜~~~

ッドヘリングがその異変に気付いたのは今まさに今日と明日の入れ替わろうという時刻だった。
 彼の館にはレッドヘリング以外の人間は住んでおらず、また人間以外の者も住んではいない。ひょっとすれば彼の許可なく住まうネズミなどはいるのかもしれないが、レッドヘリングが近日それを見かけた記憶はなかった。
 そうであれば机ほどの高さから本の落ちたような物音にレッドヘリングが不審に思うのは当然のことだった。
 はて、と心の中で首を傾げ、音の原因を探すと3つ目の部屋でそれを見つけた。
 彼の予想を裏切らず、床に落ちていたのは茶色い皮の表紙の分厚い辞書のような本だった。そして視線を上げた時、茶色い本の乗せていた机の上に乱雑に詰まれた、微妙なバランスを保ちなんとか今まで現状を維持していた本の山を見てレッドヘリングは今落ちたのは当然の結果だったのだろうと納得する。
 しかしその危うげな現状に大した感心を抱かなかったレッドヘリングは、本の山を整理することもなく茶色い本を再び山の頂上に加えようとした。
「・・・」
 しかし彼のきまぐれがその手を止めた。

「これは懐かしい」
 小さな笑みを浮かべ本を開く

 それは人と魔物の共存を目指した語り部の綴った物語。信じていた者の裏切りが彼の身を闇へと落とし、人の体と記憶の全てを失なった男。
 全てを失い、それでもなお彼に残ったのは苦楽を共にした友人でもなく、愛した者の顔でもなく、彼の夢見た人と魔物の手の取り合う世界だった。
 そして人と魔物の境界に身を置く、架け橋の魔物となった語り部の男。

 物語が語り部を呼ぶのか。

 語り部が物語を紡ぐのか。

~~1月3日ちょっと変更したのでちょっと前から更新~~

 ともかく語り部の語る物語は事実となり、そこには人と魔物の交差する接点が生まれるのだ。レッドヘリング自身もそれを体験せねばとても信じられるものではなかった。まるで物語の登場人物の一人になったような、個々がそれぞれの意思で動きながら、一つの流れに沿って流れていくような言葉では到底言い表せない不思議な出来事だった。

「・・・」
 レッドヘリングはページを捲っていく。
 人を信じたマリオネットの物語、ミノタウロスの愛の物語、ジャックの恩返しの物語、半漁人の一目惚れ・・そして・・・

人と魔物の共存を夢見た男が、語り部となる物語。

 最後の一文を読み終えたところでレッドヘリングは小さくため息をつく。
 そして何気なくページを捲り、彼の動きが止まる。
「これは・・・・」
 それは白紙のはずのページ。語り部の手を離れて紡ぎ手のいなくなった白紙のページには文字が刻まれていた。

 フェイヨンのススキ野に立つタヌキが一匹。
 鬱蒼と茂るススキ野の中でただ一匹、北の夜空を見上げている。
「何を見ている?」
「え?」
 自分しか居ないと思っていたタヌキはびっくりして振り返る。
 がさがさとススキを掻き分け現れたのは・・・・・


「・・・現れたのは・・・」
 物語はそこで途切れていた。
「・・・」
 レッドヘリングは一度ページを戻り、再びページを捲る。
 そこには、新しく文章が綴られている・・・などということは無く、さっきと同じところで途切れた中途半端な文章。
「現れたのは・・・なんだ!」
 思わず本を掴む手に力が入る。
「気になるではないかっ」
 バン、と音を立てて本を閉じ、暗い天井を見上げて深呼吸をする。
「・・・・・」
 本を机に放り、彼らしかぬやや乱暴な足取りで書斎へ続く扉を通り抜ける。
「ドイルめ、散々貴様の下らん物語に付き合ってやった私を・・・・・」
 人であった頃の語り部の名を憎憎しげに呟いて荒っぽくソファに身を沈めた。あまり使ったことがなかったので巻き上がった埃が目と鼻がちくちくと痛む。
 程なくして呼吸が整い、再び部屋に静寂が戻る。
 レッドヘリングは何か思案するように、再び暗い天井をじっと見上げていた。

「・・・・・フェイヨンか」
 長い長い長い沈黙の後、レッドヘリングはポツリと呟いた。

16の月~1~


16の夜 ~2へ~
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