ハクはセリスに教えられた通りに街の中を歩いていた。
そして丁度7つ目の角を曲がったとき、ハクは足を止めた。
思わず歩くことを忘れていた。
少し離れた花屋の前に男の人と女の子が話しているのが見える。
男の人は知らなかったが、女の子には見覚えがあった。いや彼女こそハクの探していた少女だった。
「・・・フロル?」
距離があったので、ハクの口からこぼれた呟きが聞こえたわけでは無いのだろうが、女の子がハクの方へ振り向いた。
「ハク!」
フロルはハクを見るなりぱっと笑顔を咲かせて駆けてきた。
「ハク!来てくれたのね」
「う、うん」
飛び掛るように笑顔で抱きついてきたフロルにハクは戸惑った。
ハクの知っていたフロルはもっと内気な子のはずだった。
あんな風に他の人と楽しそうに話しているフロルをハクは今まで見たことがなかったからだ。
ハクの知っていた内向的な少女から、見る影も無く明るくなったフロルのギャップにハクは戸惑っていた。
「どうしたの?」
フロルが心配そうにハクの顔を見たのでハクは「何でもないよ」と首を振って笑顔を見せた。
一体何があったんだろう?と疑問に思ったが、手を引いて楽しそうに走り出すフロルを見てすぐにどうでも良くなった。
「来て!あっちに凄くきれいなお花畑があるの」
「よーし、じゃあ競争だ!」
手を振り払ってハクが走り出す。
後ろでフロルがずるい、と言いながら追いかける。
二人の姿はすぐに生い茂る森に遮られて見えなくなった。
(十三夜)フロルと森へ
16の夜
(2008/01/20)そして丁度7つ目の角を曲がったとき、ハクは足を止めた。
思わず歩くことを忘れていた。
少し離れた花屋の前に男の人と女の子が話しているのが見える。
男の人は知らなかったが、女の子には見覚えがあった。いや彼女こそハクの探していた少女だった。
「・・・フロル?」
距離があったので、ハクの口からこぼれた呟きが聞こえたわけでは無いのだろうが、女の子がハクの方へ振り向いた。
「ハク!」
フロルはハクを見るなりぱっと笑顔を咲かせて駆けてきた。
「ハク!来てくれたのね」
「う、うん」
飛び掛るように笑顔で抱きついてきたフロルにハクは戸惑った。
ハクの知っていたフロルはもっと内気な子のはずだった。
あんな風に他の人と楽しそうに話しているフロルをハクは今まで見たことがなかったからだ。
ハクの知っていた内向的な少女から、見る影も無く明るくなったフロルのギャップにハクは戸惑っていた。
「どうしたの?」
フロルが心配そうにハクの顔を見たのでハクは「何でもないよ」と首を振って笑顔を見せた。
一体何があったんだろう?と疑問に思ったが、手を引いて楽しそうに走り出すフロルを見てすぐにどうでも良くなった。
「来て!あっちに凄くきれいなお花畑があるの」
「よーし、じゃあ競争だ!」
手を振り払ってハクが走り出す。
後ろでフロルがずるい、と言いながら追いかける。
二人の姿はすぐに生い茂る森に遮られて見えなくなった。
(十三夜)フロルと森へ
レッドヘリングのオーバーリアクションにセリスがため息を吐く。
「冗談よ」
「笑えん冗談を言うものではない」
そんなレッドヘリングにセリスのため息が深くなる。
「始めはそのつもりだったけどね」
「・・・・」
「まだあの子の物語は終わっていないもの」
物語、という言葉にレッドヘリングが敏感に反応する。
「気付いていたのか」
「当然よ」
セリスは不機嫌そうに言うと、改めてレッドヘリングを見回し言葉を続ける。
「憐れねえ」
セリスは憐れむような、しかし楽しんでいるような不思議な口調で言った。
「何?」
レッドヘリングには言その葉の意味が解らなかった。
「ほんの少し変わっただけなのにね」
「?」
しかしレッドヘリングはその言葉が独り言のように感じたのでそれ以上の追求はしなかった。
「お前は、この物語を知っているんだな?」
「ええ」
その問いにセリスは素直に頷いた。
「この物語は・・・・いつ終わるのだ?」
レッドヘリングの言葉にセリスは顔を伏せて堪えきれなくなったようにクス、と笑い声が聞こえた。
「本当に、憐れねえ」
顔を上げたセリスは言葉とは裏腹にひどく意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
「いいわ、教えてあげる」
「・・・・」
レッドヘリングは黙ってセリスの言葉を待つ。
「これはあの娘の紡ぐ、完璧な物語よ」
「完璧な物語だと?」
「望めば誰でも幸せになれる、完璧な世界」
レッドヘリングは異形のものでも見るかのような目でセリスを見ていた。
「そんなものが・・・」
「そうね、できるはずがないわ。
不思議な娘ね、もしからしたらもっと別の所から来たのかもしれないわね」
「別の所だと?」
「それ程望んでも叶えられないような、つらい世界から。でもここでは少し影響が強すぎたのね」
レッドヘリングにはセリスが何を言っているのかまるで解らなかった。
「誰でも幸せになれるのに、あんたは逆のことばかり追いかけるからつらくなるの」
「私は・・・どうすればいい」
レッドヘリングの問いにセリスは答えなかった。
「いいわ。私もいい加減飽きてきたところだったの」
「!」
「平和なんて束の間だから幸せなのよね。あんまり続くと退屈だわ。そうは思わない、ヘリング?」
不敵に笑うセリスの言葉にレッドヘリングは息を呑んだ。
「セリス・・・・」
「この物語はどれだけ続いているのだ?。一体いつから始まっていたのだ・・・・?」
(十二夜)再会(1/20更新)
16の夜
(2008/01/18)「冗談よ」
「笑えん冗談を言うものではない」
そんなレッドヘリングにセリスのため息が深くなる。
「始めはそのつもりだったけどね」
「・・・・」
「まだあの子の物語は終わっていないもの」
物語、という言葉にレッドヘリングが敏感に反応する。
「気付いていたのか」
「当然よ」
セリスは不機嫌そうに言うと、改めてレッドヘリングを見回し言葉を続ける。
「憐れねえ」
セリスは憐れむような、しかし楽しんでいるような不思議な口調で言った。
「何?」
レッドヘリングには言その葉の意味が解らなかった。
「ほんの少し変わっただけなのにね」
「?」
しかしレッドヘリングはその言葉が独り言のように感じたのでそれ以上の追求はしなかった。
「お前は、この物語を知っているんだな?」
「ええ」
その問いにセリスは素直に頷いた。
「この物語は・・・・いつ終わるのだ?」
レッドヘリングの言葉にセリスは顔を伏せて堪えきれなくなったようにクス、と笑い声が聞こえた。
「本当に、憐れねえ」
顔を上げたセリスは言葉とは裏腹にひどく意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
「いいわ、教えてあげる」
「・・・・」
レッドヘリングは黙ってセリスの言葉を待つ。
「これはあの娘の紡ぐ、完璧な物語よ」
「完璧な物語だと?」
「望めば誰でも幸せになれる、完璧な世界」
レッドヘリングは異形のものでも見るかのような目でセリスを見ていた。
「そんなものが・・・」
「そうね、できるはずがないわ。
不思議な娘ね、もしからしたらもっと別の所から来たのかもしれないわね」
「別の所だと?」
「それ程望んでも叶えられないような、つらい世界から。でもここでは少し影響が強すぎたのね」
レッドヘリングにはセリスが何を言っているのかまるで解らなかった。
「誰でも幸せになれるのに、あんたは逆のことばかり追いかけるからつらくなるの」
「私は・・・どうすればいい」
レッドヘリングの問いにセリスは答えなかった。
「いいわ。私もいい加減飽きてきたところだったの」
「!」
「平和なんて束の間だから幸せなのよね。あんまり続くと退屈だわ。そうは思わない、ヘリング?」
不敵に笑うセリスの言葉にレッドヘリングは息を呑んだ。
「セリス・・・・」
「この物語はどれだけ続いているのだ?。一体いつから始まっていたのだ・・・・?」
(十二夜)再会(1/20更新)
舞台は再びグラストヘイム城の執務室。
今日も不機嫌に書類を片付けていたセリスに、音も無く扉を開いて現れたLBが控えめに口を開く。
「・・・・・セリス様」
「何?」
セリスは顔も上げずに凄い勢いでペンを走らせながらぶっきらぼう答えた。
「是非お会いしたいという方が・・・・・」
その言葉にやっとセリスが顔を上げる。
「今度はなにかしら、ぺこぺこ?ピッキ?それとも・・・」
書類の山に手を載せて、「忙しいのが解らんのかっ」とでも言いたげ目でLBを見た。
「あ、いえ、今日は人間なのですが・・・・」
しかし彼女らしくもなく、前回同様に歯切れが悪い。
「が?」
口ごもるLBをセリスは不審に思ったが、
「ですが、なんだね?」
LBの言葉よりも先に、扉から現れた人影にセリスはその続きを悟ることとなった。
「久方ぶりだな、セリス」
ゆらりと現れたレッドヘリングはLBの言葉をそれ以上追求せずに、白い仮面の張り付いた顔をセリスに向けた。
「ほんとう、久しぶりね。でも挨拶なんかをしにきたんじゃ無いんじゃなくて?」
セリスの言葉にレッドヘリングは少々驚いた様子だったが、すぐに気を取り直す。
「話が早いな・・・ここに狸が来なかったか?」
セリスがちらりとLBの顔を見ると、LBもまたセリスの顔を見ていたので二人は2秒程顔を見合わせ、二つの視線が部屋の隅へと移る。
レッドヘリングもつられて視線を追い、厳かな装飾の暖炉と中に掛かった黒鍋を見てぎょっとする。(仮面に隠れていたので良くわからないがしていたと思う)
「喰ったのか!?」
(十一夜) 完璧な物語(1/19更新)
16の夜
(2008/01/17)今日も不機嫌に書類を片付けていたセリスに、音も無く扉を開いて現れたLBが控えめに口を開く。
「・・・・・セリス様」
「何?」
セリスは顔も上げずに凄い勢いでペンを走らせながらぶっきらぼう答えた。
「是非お会いしたいという方が・・・・・」
その言葉にやっとセリスが顔を上げる。
「今度はなにかしら、ぺこぺこ?ピッキ?それとも・・・」
書類の山に手を載せて、「忙しいのが解らんのかっ」とでも言いたげ目でLBを見た。
「あ、いえ、今日は人間なのですが・・・・」
しかし彼女らしくもなく、前回同様に歯切れが悪い。
「が?」
口ごもるLBをセリスは不審に思ったが、
「ですが、なんだね?」
LBの言葉よりも先に、扉から現れた人影にセリスはその続きを悟ることとなった。
「久方ぶりだな、セリス」
ゆらりと現れたレッドヘリングはLBの言葉をそれ以上追求せずに、白い仮面の張り付いた顔をセリスに向けた。
「ほんとう、久しぶりね。でも挨拶なんかをしにきたんじゃ無いんじゃなくて?」
セリスの言葉にレッドヘリングは少々驚いた様子だったが、すぐに気を取り直す。
「話が早いな・・・ここに狸が来なかったか?」
セリスがちらりとLBの顔を見ると、LBもまたセリスの顔を見ていたので二人は2秒程顔を見合わせ、二つの視線が部屋の隅へと移る。
レッドヘリングもつられて視線を追い、厳かな装飾の暖炉と中に掛かった黒鍋を見てぎょっとする。(仮面に隠れていたので良くわからないがしていたと思う)
「喰ったのか!?」
(十一夜) 完璧な物語(1/19更新)
場所は変わってここはグラストヘイム城の執務室。
「・・・・・セリス様」
いつから立っていたのか、金髪のショートの女性が控えめに口を開いた。
「なに?」
部屋の主にしてグラストヘイム城の主であるセリスは手を止めて、少しだけ顔を上げて扉の前に立つLBを見た。
「えっと・・・お会いしたいという方が・・・・」
珍しく歯切れの悪いLBをセリスは不審そうに見た。
「何よ。はっきり言いなさい」
「それが・・・狸でして」
「は?」
LBの言葉にさすがのセリスも間抜けな声を上げた。
「狸ってあの森にいる?」
「はい、その狸です」
セリスは右手で額を押さえて、やれやれと首を振ると再び執務机に向き直ってしまった。
「何の用か知らないけど、狸のトモダチはいないわ」
「では帰ってもらいますね」
セリスは机に向かったまま「そうしてちょうだい」と言ったが、LBが一礼して扉から消えるかどうかと言った所でLBを呼び止めた。
「はい?」
セリスはしばらく何事かを考えているように視線を落としていたが、やがてLBへと向き直る。
「たまには鍋もいいわね」
「はい?」

16の夜
(2008/01/15)「・・・・・セリス様」
いつから立っていたのか、金髪のショートの女性が控えめに口を開いた。
「なに?」
部屋の主にしてグラストヘイム城の主であるセリスは手を止めて、少しだけ顔を上げて扉の前に立つLBを見た。
「えっと・・・お会いしたいという方が・・・・」
珍しく歯切れの悪いLBをセリスは不審そうに見た。
「何よ。はっきり言いなさい」
「それが・・・狸でして」
「は?」
LBの言葉にさすがのセリスも間抜けな声を上げた。
「狸ってあの森にいる?」
「はい、その狸です」
セリスは右手で額を押さえて、やれやれと首を振ると再び執務机に向き直ってしまった。
「何の用か知らないけど、狸のトモダチはいないわ」
「では帰ってもらいますね」
セリスは机に向かったまま「そうしてちょうだい」と言ったが、LBが一礼して扉から消えるかどうかと言った所でLBを呼び止めた。
「はい?」
セリスはしばらく何事かを考えているように視線を落としていたが、やがてLBへと向き直る。
「たまには鍋もいいわね」
「はい?」

何がどこでどうなったのか、彼の道中でどんな間違いが起きたのか、それは誰にも解らない。
ハク本人にしてみればそれはごく当然の事であり、「思ったより時間がかかっちゃったなぁ」程度の問題でしかなかったので、その答えを知る者はどこにもいない。
グラストヘイムの森はフロルと遊んだハクの故郷の森とは大分違っていた。恐ろしい怪物鳴き声が昼も夜も構わずに聞こえてきて、のんびり休むこともできなかったし、緑色のでっかいトカゲに追いかけられたりもした。歩いていたら突然花に噛み付かれた時には本当に驚いた。
でも木漏れ日の差し込む朝の森を駆けるのは気持ちよくて、なんでかちょっと懐かしい感じがした。
そんな迷っている危機感など微塵も無くグラストヘイム目指すハクは・・・・・
一生分の偶然と奇跡を総動員したのか、はたまた神か物語の導きか。
地図もコンパスもまともに扱えないハクは無謀にも森を突っ切ろうとして、遥か明後日、いや明々後日を目指して歩いていたにも関わらず、今ハクはグラストヘイムの街の背後に高く聳える巨大な城を見上げて感嘆の声を上げていた。
「グラストヘイムにはついたけど、いったいどこを探せばいいんだろ?」
ハクにとってこの街にフロルがいるということは決定事項で、万に一つにもフロルが居ないだなんて想像すらできない様子だった。
「はふぅ・・・・・・」
途中で見つけた露店で買った焼きとうもろこしを食べながら、ハクは歩き疲れて座り込む。
赤い地面に気付いて何気なく見上げてみれば、太陽はもう建物の影に半分くらい隠れていた。
「こんなに人がいっぱいいるのに、なんでフロルだけいないんだろう?」
夕暮れ時だというのに往来を行き来する大量の人を眺めながらため息を吐いた。
しかし暫く人並みを、ぼーっと眺めていたハクは突然立ち上がる。
「そうだ、あの人に聞いてみよう!」
(九夜)グラストヘイム皇女(1/16更新)
ハク本人にしてみればそれはごく当然の事であり、「思ったより時間がかかっちゃったなぁ」程度の問題でしかなかったので、その答えを知る者はどこにもいない。
グラストヘイムの森はフロルと遊んだハクの故郷の森とは大分違っていた。恐ろしい怪物鳴き声が昼も夜も構わずに聞こえてきて、のんびり休むこともできなかったし、緑色のでっかいトカゲに追いかけられたりもした。歩いていたら突然花に噛み付かれた時には本当に驚いた。
でも木漏れ日の差し込む朝の森を駆けるのは気持ちよくて、なんでかちょっと懐かしい感じがした。
そんな迷っている危機感など微塵も無くグラストヘイム目指すハクは・・・・・
一生分の偶然と奇跡を総動員したのか、はたまた神か物語の導きか。
地図もコンパスもまともに扱えないハクは無謀にも森を突っ切ろうとして、遥か明後日、いや明々後日を目指して歩いていたにも関わらず、今ハクはグラストヘイムの街の背後に高く聳える巨大な城を見上げて感嘆の声を上げていた。
「グラストヘイムにはついたけど、いったいどこを探せばいいんだろ?」
ハクにとってこの街にフロルがいるということは決定事項で、万に一つにもフロルが居ないだなんて想像すらできない様子だった。
「はふぅ・・・・・・」
途中で見つけた露店で買った焼きとうもろこしを食べながら、ハクは歩き疲れて座り込む。
赤い地面に気付いて何気なく見上げてみれば、太陽はもう建物の影に半分くらい隠れていた。
「こんなに人がいっぱいいるのに、なんでフロルだけいないんだろう?」
夕暮れ時だというのに往来を行き来する大量の人を眺めながらため息を吐いた。
しかし暫く人並みを、ぼーっと眺めていたハクは突然立ち上がる。
「そうだ、あの人に聞いてみよう!」
(九夜)グラストヘイム皇女(1/16更新)
